ありあまる日常

何も感じていないようで、ありあまるほど感じていることがある日常を紹介

話さないことから始まる恐怖

私はいつもひとりだった。

ひとりが楽なんだと言い聞かせ、

周りのグループをいつも煙たそうに見ていた。

学校でも仕事でも言葉を発さない。

最小限の言葉で相手に思いを伝える。

 

ほら、たまにいるでしょ。

自分はこういう人間なんだ、って言って無理やり話しかけてくるやつ。

本当に鬱陶しい。自分はこれこれ好きなんだ、君はどう?って。知らねぇよ。

そんな話、私は全く興味がない。

怪訝な顔、話したくない、そんなオーラを出して追い返す。

 

でもそいつは私がどんなに追い返しても毎日声をかけてくる。

「今日は天気良いね」

「このニュース見た?やばいよね」

「見てこの靴。新しく買ったんだ」

何が楽しくて毎日毎日私に話しかけるんだろうか。

面白い?誰とも話さない私を見てかわいそうなんて思っているのなら、

今すぐやめてほしい。

私はそんな風に思われたいがために話さないわけではない。

 

ひとりで生きられる。

そう思っているから話さないのだ。

 

 

でも時折

「私は何のために生きているのだろうか」

「なぜ生まれてきたのだろうか」

そんな思いが私の心に顔をのぞかせる。

 

人とも話さない。

人に興味がない。

 

 

 

 

 

そんなこと言いがかりだ。

本当は興味がある。

あの人の服装かわいいな、どこで買ったんだろう。

あ、あの男の子今日も電車に乗ってる。

あの人面白いな、もっと近くで話聞いてたいな。

 

 

本当は怖いんだ。

話しかけて

怪訝な顔されるんだろうか。

嫌われるんじゃないだろうか。

愛想笑いされて終わるんじゃないだろうか。

変な空気にしたら嫌だな。

 

怖いから言葉を発さない。

そんな自分を演じている。

 

でもいつか。

そんなことを考えながら30年。

 

私は今日もいつもの一日を終える。